THE ORIGIN IS FOR RACING
スタイリングの良さと動きやすさ、
その原点はレザースーツにある。
“パターン”は服飾用語では原寸の型紙のことだ。この型紙を元にマテリアルを切り出し、縫い合わせてウエアは完成する。これは一般ファッションウエアもHYODのロードレース用レザースーツも、そしてこのROMAN BLACKも同じだ。HYODウエアと一般ウエアの大きな違いはこのパターンだ。一般レザージャケットの場合、テーラードジャケットなどのパターンが原点になる。紳士服の場合マテリアルは布で、伝統的なパターンを使い、オーダーメイドなら仮縫いを経て最終的に仕上げられる。良くできたテーラードジャケットは着心地が良く、スタイルも気品があって素晴らしい。同じように一般レザージャケットも立ち姿はスタイルが良く、これぞ“革ジャン”という独特の存在感があって、これに憧れる人々の気持ちはよくわかる。けれども、残念ながら激しい動きやライディングフォームを取るようなパターンではない。つまり紳士服の伝統的なパターンを基本とする一般レザージャケットは、動くためには作られてはいない。そのため、腕を上げたりバイクに乗った姿勢ではジャケット全体が持ち上がり、背中が出やすく、腕(特に肩辺り)に窮屈な感じが出たりする。
一方HYODウエアのパターンはレザースーツが基本だ。ロードレースでは激しく前後左右に動き、しかも深い前傾姿勢になる。HYODが最新レザースーツで採用している3Dダイナミックパターン(3D動体パターン)は、そのネーミング通り、動く身体にフィットし、より動きやすく、より安全を追及したものだ。これは長年レザースーツを製作してきた現時点での答えだ。もちろんROMAN BLACKはHYOD製なのだからレザースーツのパターンをもとにストリート用に発展させている。つまり最初から立体パターンで、動く身体を包むという考え方だ。紳士服からなのか、レザースーツからなのか。これが大きな違いになる。
既存33サイズあるレザースーツと同じ発想。
ただし、ROMAN BLACKはロードレース用ではない。ストリートライディングがしやすく、バイクから降りたときのスタイルの良さも追及している。前傾姿勢を重視するレザースーツでは、普通のウエアより首回りや袖(アームホール)を前に付ける。これはハンガーに吊るすとよくわかる。腕や膝がかなり前に出ている。もちろんROMAN BLACKはそこまで前傾姿勢を重視していない。けれども、バイクに乗る姿勢を取ると腕が自然に前に出て、ジャケットも持ち上がらず、背中は身体の自然な緩いS字状のラインにしなやかに添う。バイクに乗っても動きやすいくらいだから、普通に歩いていてもとても自然に身体の動きに追従する。だから街着としても違和感がない。
一方縫い目はレザースーツとは異なる。レザースーツは転倒時の擦れなどで裂けないように、縫い目は表面をできるだけフラットにしてある。縫い目やワッペンなどの出っ張りは、細かいことを言えば空力性能にも影響するから、できるだけ凹凸がない方がいい。そのためレザースーツでは革を何枚も重ねて縫う場合、強度を確保しながら部分的に薄く漉いて、縫い目が極力厚くならないようにしている。ROMAN BLACKはこれとは反対に、重ね縫いする枚数も少ないので、レザーは削がない。レザージャケットの場合は、縫い目がスタイルの重要なアクセントになり、縫い目自体がスタイルを保つアウターフレームのような役割をするから、あえて少しふくらみとハリを出すようにしていて、これは型崩れを防ぐことにも一役かっている。
その縫い目のステッチは、美しく見えるピッチ(糸と糸との間隔)で演出される。このあたりは求められる要件(強度なのか、美しさなのかなど)による選択だ。
そしてデータや経験から、既存20サイズを用意した。これも既存33サイズあるレザースーツと発想は同じで、CADで管理する。それぞれの人に一番しっくりくるサイズを選んでいただきたい。レザースーツのようにパフォーマンス重視ではないが、サイズ選びはスタイルの良し悪しを決める。たぶん、こんな事柄を理解し選んでいくことで、一生付き合っていけるレザージャケットと出会えるだろう。