驚異の衝撃吸収材“D3O®”とは
ライディングウェアの性能において重要なのは、まずは安全性です。レザースーツにおいて昔からメイン素材に革が使われているのは、転倒時に路面を適度に滑り、衝撃を和らげながら、擦れにも強いからです(防風性も高いのですが)。けれども革だけではライダーを守りきれないので、時代を追うごとに各種プロテクターを装備し、その素材も進化し、数自体も増えてきました。プロテクターはときには衝撃をはね返し、ときには吸収し分散して身体へのダメージを最小限にしなければなりません。ですから素材、構造、形、配置は非常に大切です。と同時にライダーの動きを妨げないようにしなければなりません。そしてレーシングスーツの開発時により良いプロテクター用素材として発見したのが、驚異の衝撃吸収素材D3O®(ディー・スリー・オー)でした。イギリスのD3O® lab社が開発し、製造するこのプロテクション材は、簡単にいえば衝撃の強さで分子の結束が変化する素材です。何も衝撃が加わっていないときや衝撃が弱いときには、分子は自由に動き、素材は非常に柔軟です。それが一度、強い衝撃を受けると、瞬時に分子同士が手を繋ぐように結束して網=ネットのような状態になり衝撃を吸収し分散します。そして、衝撃が弱くなったり無くなってしまうと、分子の結束は解かれ、元の状態に戻るのです。分子自らが衝撃の強さを感知し、結束を変化させる、そして復元することから“intelligent shock absorption”知的衝撃吸収と呼ばれています。
D3O®テクノロジー
たとえば、上手い野球選手やサッカーのゴールキーパーは、ボールを受けるときに、衝撃を和らげるために少しグラブや手を引きながら捕球します。手に充分な力が入っていなければ、ボールに弾かれてしまいますし、逆に強く突っ張っていたのでは、ボールの衝撃をモロに受け相当痛く、正確な捕球もできないでしょう。D3O®は上手い選手と同じで、衝撃の強さに応じて吸収・分散するのです。 また、D3O®は、バイクのサスペンションとも似ています。サスは大きな入力があればダンパーが強く効き、小さいと弱く、そして元の状態に戻ります。ヘルメットのライナーやクルマのボディは、衝撃を吸収・分散しますが、自らが壊れることで行っているので元の状態に戻れず、2次衝撃が同じ個所にあった場合は、機能を充分に発揮できません。一方D3O®は物質的に分子構造が変化する特性を持っているので、衝撃を受けても元の状態に戻り、その能力を維持していきます。その性能は、保管方法やメンテナンスに問題が無い限り、劣化することはありません。これらの特性はD3O®が他のプロテクションと異なる大きな特徴と言えるでしょう。
D3O®のベース材は、オレンジ色のベトベトした粘度(スライム)のような物で、これを成型してウエアなどのプロテクション材として使えるようにします。成型された物はメッシュ状など何タイプもありますが、D3O®は柔軟なので、ライダーの動きや姿勢で変化するような個所に使えるのも特徴です。レザースーツに採用されている、ヒップ部分などハードシェルを使えない個所(正確には使えても、動きを妨げてしまう箇所)には最適で、膝、肘、肩などはハードシェルと組み合わせることでプロテクション効果が一段と高くなります。
D3O®のベース材は、オレンジ色のベトベトした粘度(スライム)のような物で、これを成型してウエアなどのプロテクション材として使えるようにします。成型された物はメッシュ状など何タイプもありますが、D3O®は柔軟なので、ライダーの動きや姿勢で変化するような個所に使えるのも特徴です。レザースーツに採用されている、ヒップ部分などハードシェルを使えない個所(正確には使えても、動きを妨げてしまう箇所)には最適で、膝、肘、肩などはハードシェルと組み合わせることでプロテクション効果が一段と高くなります。
※メンテナンス方法に関して、詳しくはこちらをご参照ください。
HYODとD3O®
D3O®はすでにスキー、自転車、登山用のプロテクター、スポーツ用シューズ、バレエシューズなどに使用されています。HYODではレザースーツ本体をD3O®lab社に送り、コンセプトやその製品作りが認められ、正式採用となったのです。HYODレーシングスーツへのD3O®プロテクションの開発にあたっては、2007年よりD3O®ラボの全面的な協力体制のもとでスタートしました。そして、2008年の鈴鹿8時間耐久ロードレースにおいては、見事優勝を収めたホンダレーシングの清成龍一選手のレーシングスーツや、数回の転倒にもかかわらず、怪我もなく8時間の長丁場を、4位入賞で完走したヨシムラスズキの加賀山就臣選手らのレーシングスーツにもD3O®プロテクションを採用し、実戦で使用することでその効果を実証しています。